「6ヶ月以上慢性の耳炎がコントロールできていない時」
「慢性外耳炎の原因が正確にできていない時」
「触った時に耳道が硬い、狭くなってる」
「再発性、持続性の耳漏」
「耳の中にできものがある」
人間にとっての耳科とは「人が人らしく生きるために重要な多くの感覚器を診療の対象にする学問」と言われています。これを動物に置き換えると動物との関係性に関わる学問であり、飼い主様との関係の質を向上させる診療科になります。
耳は本来、鼓膜から外耳道を介してできた汚れを体外へと排出する機能が備わっています。
皆さんは綿棒やコットンを耳の穴に入れて、擦って汚れがなくなることを耳掃除と思ってませんか?これをすることで耳の正常な浄化作用をとめてしまい、逆に細菌を増やしてしまうということが起こります。
外耳炎は犬全体の10〜20%、猫全体の2〜10%で見られ、動物病院の来院頻度No.1の病気です。
外耳炎を診断するためには主因(アトピー性皮膚炎など)、副因(マラセチアやブドウ球菌など)、素因(ポリープ、腫瘍、水泳、垂れ耳など)、持続因子(中耳炎、真珠腫、耳道の狭窄など)などの内容を特定し、病態を推測することが大事になります。
当院では診察時に耳道内の細菌の有無やレントゲンによる中耳炎の有無を確認し、さらにKARL STORZ社製のオトスコープを使って外耳道と鼓膜の確認、洗浄を行なっています。
今まで動物病院で耳の治療を受けたけど外耳炎を繰り返したりよくならない方々、ご自身の愛犬、愛猫の耳の中を見たことはありますか?
見ることで耳内の状態も分かりますし、治療の必要性も納得ができます。
逆に耳内を見ないで綿棒だけで治療しているだけでは治らない外耳炎が必ず存在します。
治らない外耳炎でお困りの方、一度耳の中を覗いてみませんか?
「耳そうじは本当に必要なの?」という人間の耳科のドクターが作られた動画を貼っておきます。
この中にとてもわかりやすく耳垢の役割、耳掃除の必要性、耳掃除をするとどうなるかが説明されています。基本的に耳垢は体にとって守ってくれる友達です。しかし、そこに感染が加わると敵に変わります。敵に変わってしまわない様に上手に付き合っていくことが大事です。
外耳炎とは、様々な要因によって引き起こされる外耳の炎症です。外耳炎の発生頻度は犬で10〜20%、猫で2〜10%と高く、動物病院で最も来院件数の多い病気です。外耳の表面は皮膚で覆われているため、炎症が起こるとひっかっきたくなります。
また、外耳炎は全身の皮膚疾患の症状の一つとして出ている場合もあります。
外耳炎から全身の皮膚疾患や痒みに広がって行ったり、逆に外耳炎から中耳炎、内耳炎、髄膜炎と奥へと広がって行ったりすることもあります。
全身の痒みがある場合に、耳の治療をしっかりしてあげると、全身の痒みの症状が消えることもよくあります。
中耳炎とは、中耳に発生した炎症です。中耳は、外皮に覆われた外耳と神経に属する内耳に挟まれているので、中耳炎が発症すると外耳の皮膚に悪影響を与えるだけでなく、内耳にまで悪影響を及ぼすことがあります。
発生頻度は犬の慢性外耳炎の50〜80%とかなり多く、健康な猫でも14%に中耳炎が存在していたとの報告もあります。
主な中耳炎として急性中耳炎、慢性中耳炎、真珠腫性中耳炎、滲出性中耳炎の4つが挙げられます。
動物病院では来院時に病理学的変化が進行している場合が多く、慢性中耳炎が主にみられ、真珠腫性中耳炎、滲出性中耳炎がまれにみられます。中耳炎が慢性化し重篤化すると炎症性ポリープが発生することがあります。
内耳炎は蝸牛と三半規管という神経の領域に炎症が起こった状態です。内耳炎は、中耳炎から症状が広がって発症するのが基本です。
中耳と内耳の間にある骨が炎症によって壊されて穴が開き、炎症が内耳に広がって内耳炎になります。
治療は神経の専門医が行うべき事態で、極めて重症です。
今後髄膜炎に発展すると、死亡するリスクが高まります。
髄膜炎は発熱や嘔吐、元気食欲喪失などのよくある症状から、たった1〜2日で命に関わる状態になってしまう極めて恐ろしい病気です。治療を行わないと約半数が死亡し、適切な治療を受けた場合でも5〜10%が死亡します。
また、生存したとしても11〜19%で後遺症が残ってしまうと報告されています。過去、重度の外耳炎から髄膜炎に発展し、死亡してしまった症例を実際に経験しています。
炎症性ポリープ(鼻咽頭ポリープ)は炎症によって発生します。
鼻が詰まり、鼻をすすったりすることで鼓室砲の圧力が陰圧になり、鼻や喉から時間を通って鼓膜を突き破るところまでポリープが伸びてきます。
そのため、ポリープは見た目よりもかなり長く、ステム(幹)の部分をできるだけ長く除去してやらないとすぐ再発してしまいます。
ステムを取り残さずに撮るのはとても難しく、適切な知識と鼓室砲まで覗ける細径内視鏡と掴むためのデバイスが必要です。
耳ダニは猫や犬同士の接触から感染する寄生虫性の伝染病です。
耳ダニはとても痒く、よく耳を掻いたり、頭を振ったりするのが特徴で、黒い乾いた耳垢がたくさん出ます。
比較的薬で簡単に駆虫できますが、中にはなかなかいなくならないことや耳ダニがいなくなっているのに黒い耳垢が出続けることもあります。それらは、おそらく耳の中に大きな耳垢の塊があり、その中まで駆虫出来なかったり(耳ダニは耳垢の中で1ヶ月生存可能と言われています)、耳の中の環境が悪いままになっているのではないかと推察します。
当院での耳ダニがいた外耳道の洗浄風景を載せておきますが、これを見れば、いかに耳ダニを落とすだけでなく、中の洗浄が大事かがよくわかるかと思います。
STORZ社製のオトスコープ用モニター。ハイビジョン。
直径3mmのスコープと内部のチャネルから鉗子類を使用可能。
細いため、中耳の観察まで可能。
鮮明な、実際の色に忠実なフルハイビジョン解像度の画像(1920 x 1080p、16:9 アスペクト比
正しい治療方法の判定と治療、所見のドキュメンテーション、およびオーナーへの病状説明の改善が可能です。ビデオ耳鏡検査は、ルーチンの健康診断方法として、迅速かつ容易に行うことができます。
作業通路が大きいので、生検採取用のインスツルメント、および異物除去用インスツルメントやポリープ除去用インスツルメントを使用でき、また根本的な耳内クリーニングのための洗浄および吸引もできます。
TELE PACK+ VET、C-MAC® HDディスプレイ、および SMART SCOPE などの、カールストルツのビデオシステムを使用できます。
各種検査費用 | 外耳道の観察 | 2,100円〜(税抜) |
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サンプルの染色と観察 | 2,500円〜(税抜) | |
外耳道の洗浄 | 3,000円〜(税抜) |
耳の状態と、いつから、どのような飼育環境で、どのような治療を過去にしてきたか、今何が問題なのかなどを評価します。
外耳道をオトスコープで観察し、外耳道の状態を把握。外耳道からの耳垢をサンプリングし、微生物が繁殖しているのか、何が繁殖しているのか、膿は出ているのか、バイオフィルムはあるのかなどを診断し、適切な洗浄剤を選択します。鼓膜が見える場合は、鼓膜の状態を確認しますが、短頭種や外耳道が腫れていたり狭窄していた場合は、確認できないことも多々あります。
10分おいてから洗浄することで汚れが落ちやすくなり、洗浄の時間が短くなります。
どの程度汚れが落ちているかを確認し、再度鼓膜や外耳道の状態を確認し、適切な点耳薬を選択して注入します。
薬剤の種類や耳の状態によって、次の再診時期を決定し、外耳道の環境が維持できているかを再度評価します。
外耳道の狭窄が酷かったり、中耳炎が疑われる場合はMRIが取れる神経の専門医へ紹介し、中耳や内耳の状態、外耳道の周囲に傍耳膿瘍がないかを確認してもらいます。中耳や外耳の状態が悪く、内科での治療が困難な場合は最悪皮膚科や外科の専門医に依頼し、全耳道切除を行なわざるを得ない場合もあります。
当院はアジア獣医皮膚科専門医 大隈尊史先生の地域唯一の提携病院で皮膚科遠隔診療サポートを受けられます。
かがみ動物病院 皮膚科遠隔診療サポート医師 大隈 尊史(おおすみ たかふみ)
日本獣医皮膚科学会認定医(2012年取得)
獣医腫瘍科認定医Ⅱ種(2016年所得)
アジア獣医皮膚科専門医取得(2023年取得)
動物病院での診療件数で一番多いのは外耳炎です。
しかし、通常の耳掃除や点耳・内服だけではよくならないことは多々あります。慢性外耳炎の2割は中耳炎と言われ、さらに、中耳炎と診断されるまで50%は2年以上経過しているとデータが出ています。中耳炎と外耳炎は見た目では区別がつきません。
長年外耳炎で耳掃除に通院している方は、一度、耳科の動物病院を受診してみませんか?